#MeToo について少しだけ ① -総論-

はじめに

4月1日、モデルのKaoRiさんが、「アラーキー」の愛称で知られる世界的フォトグラファー荒木経惟さんから長年受けたセクハラについてブログで公表し、話題になりました。
これを受け、モデルの水原希子さんが、ご自身の体験をまじえてメッセージを発信したこともニュースになりましたね。
最近では、財務省の事務次官が女性記者に対してセクハラ行為を行っていたことが発覚し、懲戒処分を受けたことも記憶に新しいところです。
こうしたニュースのためか、ここ1か月ほど、#MeToo 関連のご質問をいただくことが多かったので、ここで#MeToo 問題についてまとめておこうと思います。
まずは、総論的なお話から。

 

そもそも #MeToo ってなに?

#Metoo とは、SNS上でハッシュタグ「#Metoo」をつけてセクハラ被害を告発するムーブメントのことをいいます。
最近の日本では、ここから派生して、権力や上下関係を利用して行うセクハラを表すキーワードとして使われるようになってきている気がします。

#Metoo は、2017年10月15日に大物映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインさん(映画プロデューサー)のセクハラ疑惑が報じられたのをきっかけに、女優のアリッサ・ミラノさんが“Me too”と声を上げるようツイッターで呼びかけたことが始まりだとされています。
#TIMESUP も同様のムーブメントとして、ナタリー・ポートマンさんやエマ・ワトソンさんといったハリウッドの人気女優たちが支持しています。「時間切れ」という意味のこのムーブメントは、映画界だけでなくあらゆる業界にはびこるセクハラや性差別、虐待に対抗するという力強いメッセージを込めたものです。
これを受け、ゴールデングローブ賞の授賞式では女性がブラックドレスを着てセクハラ撲滅を訴えるブラックドレスムーブメントが、その後のグラミー賞では白いバラを身につけるホワイトローズムーブメントが展開されました。

ファッション界でも同様のムーブメントが巻き起こりました。これについては、次回取り上げたいと思います。

日本でも、ブロガー・作家の伊藤美香(はあちゅう)さんがセクハラ被害を実名で告発したり、フリージャーナリストの伊藤詩織さんが記者会見で準強姦被害を告発したのに続いて著書を出版したことは記憶に新しいところです。

 

セクハラってなに?

➤ セクハラの定義

「セクハラ」にはいろいろな定義がありますが、一般的には相手の意に反する性的な言動、つまり性的嫌がらせをいいます。
セクハラというとあらゆる場面で問題になりそうですが、法律上定められているのは、いわゆる職場でのセクハラです(男女雇用機会均等法11条)。
職場といっても、オフィスに限られるわけではなく、取引先や顧客の自宅、接待の席など、業務の延長と考えられるものもすべて職場にあたります。
また、セクハラには、男性から女性に対するものはもちろん、女性から男性、また同性に対するものも含まれます。
被害者の性的指向や性自認も問いません。

このような職場でのセクハラには大きく2つの類型があるといわれています。

① 対価型セクシャルハラスメント
職場の地位や役職を利用して、解雇や降格、減給などの不利益を与えるケースです。
上司が女性の部下から性的関係を拒否されたため、その部下を解雇するなどがこれです。② 環境型セクシャルハラスメント
労働環境が不快にさせ、就業する上で見過ごせない程度に支障が生じるケースをいいます。
上司が女性の部下についての性的なうわさを流したため、部下が出勤するのがつらくなってしまった場合などがこれです。

 

なお、法律で定められているのは職場でのセクハラだけですが、これ以外でも、一定の人間関係の中で性的な嫌がらせを受けた場合にはセクハラにあたることがあります。

➤ セクハラの判断ポイント

よく「被害者がセクハラだと感じたらセクハラですよね?」と聞かれるのですが、確かにそういう側面はあるものの、一般的には、被害者の主観を重視しつつ、一定の客観性が必要であるとされています。
セクハラが男女の認識の違いによって生じている面があることを考慮すると、被害者が女性である場合には「平均的な女性(労働者)の感じ方」を基準とし、被害者が男性である場合には「平均的な男性(労働者)の感じ方」を基準とすることが適切であるとされています。
つまり、通常の女性または男性としてどう感じるか、がポイントになるといえます。
その上で、個別具体的な事情を考慮して、セクハラにあたるかどうか判断されます。

 

セクハラの加害者は処罰されるの?

某政治家が「セクハラ罪」はないと発言したことが話題になっていますね。
確かに「セクハラ罪」という罪はないものの、セクハラをした加害者は、損害賠償義務を負ったり、場合によっては刑罰に問われることもあります。

➤ 加害者の責任
セクハラによって、被害者の尊厳やプライバシーという人権が傷つけられることになります。
このように、加害者のセクハラ行為は人権を侵害する不法行為にあたり、加害者は損害賠償責任を負うことがあります。

悪質なセクハラは、刑事罰に問われることもあります。
たとえば、無理やり身体に触れたりした場合には、傷害罪や暴行罪、強制わいせつ罪、強姦罪などが成立する可能性もあります。
また、被害者の尊厳を傷つけるようなことを言った場合には、名誉棄損罪や侮辱罪に問われる可能性もあります。

➤ 会社の責任
職場でのセクハラの場合には、会社が責任を問われることもあります。
使用者として、加害者と連帯して不法行為責任を負ったり、セクハラのない快適な労働環境を提供できなかったとして債務不履行責任を問われることもあります。
また、会社にはセクハラを防止する義務があるので(男女雇用機会均等法)、何の対策もしなかったような場合には会社名が公表されることもあります。

 

加害者の責任を追及したい!

セクハラ被害に遭い、会社にしかるべき対応を求めたり、加害者に損害賠償を請求する場合、セクハラがあったことを証明するための証拠が必要になります。
セクハラは、二人きりの時など密室で行われることが多く、一度きりという場合も少なくありません。
また、加害者にセクハラの意識がないことも多く、「そのつもりはなかった」「同意があった」などと事実自体を否定する場合がほとんどです。
さらに、狡猾な加害者の場合には、わざと証拠を残さないよう、メールやLINEも残さず、人目を避けてセクハラに及ぶことも少なくありません。
このように、音声データや写真はおろか、目撃者やメールなどの証拠がなく、加害者も否定しているような場合には、セクハラの事実が認められにくく、泣き寝入りせざるを得なくなってしまいます。

このような事態にならないよう、できる限り証拠を残すよう心がけてください。
具体的には、次のようなものが有効です。

・メールやLINE
セクハラの言動が含まれるメールやLINEなどは、消さずに残しておきましょう。
直接的な言動が含まれていなくても、他の証拠とあいまって意味が出てくる場合もありますので、やり取りはすべて残しておくようにするといいと思います。
「気持ちが悪い」「見るのもイヤ」という理由で消してしまいたい気持ちも十分わかりますが、削除ボタンを押すのをグッとこらえましょう。

・目撃者など
セクハラの場面に同席した人がいる場合には、その人の供述も有力な証拠になる可能性がありますので、何かあったら協力してもらえるようお願いしておきましょう。
また、加害者がセクハラのことをまわりに話している場合もあります。
知っていそうな人にさりげなくアプローチしてみるのもいいと思います。

・録音・録画
セクハラにあいそうな場合には、スマホやアプリなどでこっそり録音しておくことも有用です。
先日話題となった、財務次官の女性記者に対するセクハラ事件でも、女性記者がこっそり録音した音源を週刊文春に持ち込んだことがきっかけとなりました。
秘密録音については、SNS上でもいろいろな情報が流れましたが、会話中に相手に内緒で録音したからといって、犯罪になったり、民事裁判の証拠として使えなくなるということはありませんので、ご安心ください。

 

#MeToo とつぶやきたい!

#MeToo ムーブメントを受けて、はあちゅうさんのように、実名をあげてつぶやきたいと考える人も少なくないと思います。
勇気をだしてセクハラ被害を公表することは、セクハラに対する社会の意識を変え、同じような被害に遭った人を励ますことにつながる、非常に意義のある行為です。
ただ、実名をあげてつぶやくことは、加害者とされる人の名誉を害することになり得るので、注意が必要です。

ある事実を不特定または多数の人が認識できる状態にしたことにより、人の社会的評価が傷つけられた場合には、名誉毀損罪が成立します。
よく勘違いされるのですが、事実が嘘である場合はもちろん、真実である場合でも、名誉毀損になり得ます。
セクハラ被害を加害者の実名付きでつぶやいたり、または加害者を特定できるような形でつぶやいた場合には、その人の社会的評価が下がることになるので、名誉毀損にあたり得るのです。

ただし、名誉毀損にあたる場合でも、その事実に① 公共性、② 公益性、③ 真実性があれば、例外的に罰しないとされています。
通常、加害者が有名人であるといった事情はあまりないと思いますので、① 公共性は認められにくいように思います。
また「セクハラがはびこる社会を変えたい!」という公益的な目的も強いとは思いますが、恨みなどの個人的な感情からツイートすることも少なくないと思いますので、② 公益性の点でもなかなか厳しいのではないでしょうか。
仮に① と② が認められたとしても、上で述べたとおり、証拠がないことが多く、③ 真実性を証明することも厳しいのが実情です。
このように、加害者が特定できる形で公表することは犯罪になる可能性がありますので、注意が必要です。

 

おわりに

セクハラは、被害者の心に大きな傷を残します。
#Metoo ムーブメントをきっかけに多くの女性が過去の被害を少しずつ語り始めたように、被害者が事件を乗り越え、それを自分の口から語れるようになるまでには、長い時間とさまざまな苦しみが伴います。
もし被害にあったら、一人で抱え込まずに、すぐに信頼できる人や専門の窓口に相談してください。

次回は、ファッション業界における#MeToo ムーブメントについてご紹介したいと思います。

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